2024/11/6 価格改定のお知らせ
甘酒について米麹について

進む米麹作りの機械化と、甘酒の酵素添加はあたりまえ!?裏話

白味噌の麹蓋製法による手作り米麹づくり。甘酒について

2020年6月、コロナウィルスの影響で味噌の仕込みが激減するなか、久しぶりにお味噌を仕込んで米麹が出たので、甘酒の仕込みをすることができました。

久しぶりの甘酒製造だったので、感が狂ったのか2回ほど失敗が続き、出入りの仕入元の担当者に電話で相談すると数日のうちに顔を出してくれました。

その中で米麹作りの機械化の話になり…

小規模な醸造元でも麹づくりの機械化が進む

●●麹屋さん、ドラム式の製麹機を入れられました。

代表 5代目
代表 5代目

そうなんですか!?

規模が小さめやしホームページでも麹蓋こうじぶたつかって手作りでやってはる見たいな感じですけど。

逆に規模が小さくても、人手が足りてないところほど機械は入れたはりますね。

麹蓋こうじぶたに盛る前まで機械でやって、あとは麹蓋に移し替えたら一応は手作りですから。

代表 5代目
代表 5代目

理屈から言ったら定義には入るし手作り表示できるけど、最初からほとんど手作業でやってるウチとかアホらしくなります。

その製麹機ってどんな感じなんですか?

米洗いから、床もみまで自動でやってくれます。あとは機械でやってしまうか、そこから麹蓋こうじぶたに切り替えたりできます。

代表 5代目
代表 5代目

それ、めちゃめちゃ楽ですね。

米洗い機も、蒸し器も、放冷機も要りませんやん。麹作りの3日目の朝まで1人手放しってことですよね。

お味噌に「手作り」表示ができる。定義とは

2点の条件を兼ね備えてないと「手作り味噌」の表示ができません。

  • 麹蓋こうじぶたを使用して作った米麹であること。
  • 天然醸造であること
麹蓋とは?

麹づくりの工程の終盤に使用する道具のこと。
30cm×45cm、深さ5cmの杉材製の入れ物です。麹が成長すると大量の水分が蒸発するので調湿作用が優れている柾目が使われます。麹蓋で使って作った米麹を「蓋盛り麹」と呼びます。

サイズがさらに大きいものを「蓋」ではなく「箱」と呼び、箱で作る米麹を箱盛り麹と呼んだりします。

天然醸造は今回のテーマから外れるので割愛します。

手作りの米麹づくりとは

蓋盛り麹製法と、機械製麹の違い

手作りした場合の工程表です。
下の矢印→は機械製麹をした場合の工程です。

全部でまるまる三日間の行程です。
1日目の米洗いに始まり4日目の早朝に麹が取り出せるようになります。

手作りの米麹づくり流れ
  • 1日目
    米洗い・浸漬

    米を洗い浸漬します。
    (作業2名、1時間、米洗い機、浸漬水槽を使用。)

  • 2日目、午前
    米蒸し・放冷・種切

    米の蒸し、適温に放冷、種切り(麹菌を付ける)、麹室の床に「引込み」ます。
    (作業3名、3時間、蒸し器、放冷機、麹室を使用)

  • 2日目、午後
    床もみ

    床に引込んだ麹を撹拌し、品温均一化をする「床もみ」作業。
    (作業2名、1時間弱、粉砕機、麹室を使用。)

  • 3日目 午前
    麹盛り

    品温が上がった床の麹を150枚の麹蓋に盛る「盛り」作業。
    (作業2名、1時間、麹蓋150枚、麹室を使用。)

  • 3日目 午後
    手入れ

    麹蓋150枚に盛った麹は品温40℃以上になり、再びほぐし均一化する「手入れ」の作業。
    (作業1名、1時間、麹室、麹蓋150枚を使用)

    以降は室内の温度・湿度の管理調整を深夜までつづけ…

  • 4日目
    出麹

    成長具合を確認して米麹完成です。

3日目に麹蓋を使えば、手作り表示、可能

3日目に麹蓋を使えば、それまでの工程をすべて機械で自動化しても「手作り」の麹と呼べるのが現在の定義です。

つまり3日目の麹盛りの直前まで全て機械一台がこなします。
次に人力で麹蓋に盛るか、引続き機械で行うか、選べるというのが会話の中で出てきた麹作りの機械化です。

理屈としては通りますが、実際の麹作りは種麹を切ったところから、温度や湿度の環境管理が始まっています。

最初から自動で機械を入れてしまい、最後だけ麹蓋を使えば「手作り」と言うのは腑に落ちません。

米麹作りの機械化のメリットは大きい

  • 人件費不要、少人数化
  • 大量生産も可能
  • 省スペース、機械の数を減らせる
  • 遜色ない米麹の出来栄え

手作り製法では3日目の麹盛りに至るまでに、米洗い機、浸漬水槽、蒸し器、放冷機、粉砕機、麹室と床とたくさんの設備とスペースが必要です。

それがドラム式自動製麹機1台でこなしてしまうので、設備投資、維持メンテナンス、省スペース化には絶大な効果があります。

さらに、作業員が減らせるメリットは規模の大小関わらず絶大なコストカットが可能で効果が大きいです。

1人従業員を正社員で雇えば年間400~500万円以上が社会保障込みで必要になり、当然、雇用中は毎年この金額が必要になります。

これが機械の初期投資とメンテナンス費だけで済むなら、数年でペイするのは簡単です。

さらに機械の生産量少量化がされているので1回の製造で300kgなど手頃な生産ができるメリットも小規模な製造元にも機械製麹が復旧するようになってきました。

九重味噌では手作り製法をしていますが、米洗い機、放冷機、粉砕機などで一部機械化をしています。しかし、麹作りの品温管理はすべて人が目視でやっているので、あくまで機械は人の作業補助の性格です。

価格に転嫁できない手作り米麹は、お買得

自動機械製麹より圧倒的にコストが継続的にかかる手作りの米麹づくりですが、その価格が商品に転嫁されることはありません。

  • 最初の工程から手作り製法でつくる米麹はネット販売1000~1500円。
  • 機械製麹を公開して販売している米麹800~1300円。

私が楽天、アマゾンなど簡単に見た程度ですが、こんな感じ。
中には蓋盛り麹を謳っていても機械製麹より安く販売している麹屋もあって頭が下がります。

いずれにせよ、大きな価格差はありません。また、機械製麹から途中で麹蓋に移し手作り製法をうたっている米麹はプロでも見分けがつかないのです。

甘酒の酵素添加は普通になりつつある

どんどん手軽に、大量にコストを抑えて作られる米麹。

甘酒は米麹の糖化酵素で作る食品ですが、米麹の生産コストが高いので人工的に作った酵素を添加するケースが増えているらしいです。

  • 米麹の製造コストが高い
  • 甘酒の製造コストを下げたい
  • 効率よく生産できる
  • より甘さ(糖度)を上げたい

甘酒の原材料は「米麹、うるち米」がメインの原材料です。

この米麹を作るには機械製麹でも日数の手間がかかるわけなので、米麹を減らしても十分な甘さ(糖度)を手軽に得るために酵素添加されるようです。

ただし、注意したいのが…

この添加される人工糖化酵素は、ニホンコウジカビ(アルペルギルス・オリゼー)由来のものではなく、まったくの別物。

以前はニホンコウジカビ由来の酵素添加材もあったそうですが、米麹由来なので製造コストが高いので否由来酵素が圧倒的主流だと聞きました。

さらに、食品表示義務なし(原材料表示に表示されない)

麹だ、発酵食品は体にいい、酵素をとろう、健康にいい、毎日のんでます。

代表 5代目
代表 5代目

一応、米麹は使われていますが、

米麹由来じゃない人工酵素で甘くした甘酒って…(-_-;)

まあ、病は気から、健康も気から、ということで喜んで頂ければそれでいいのかな?

これからは機械で作る米麹がどんどん増える

米麹作りの機械化のメリットは非常に大きいとわかります。それも時代の流れで仕方がないのかもしれません。

  • 労働人口の減少、高齢化
  • 経営者の高齢化、廃業
  • 生産性の向上

もちろん全ての米麹が機械製麹を入れている、すべての甘酒が麹とは関係ない糖化酵素を人工添加してる、そんな商品ばかりではありませんが、かなり多くなっているそうです。

一般消費者の方には「安く、安定供給、美味しく」という恩恵は大きいですが、手作り製法にこだわった商品まで同列に考えてる方も多いので残念な部分もあります。

九重味噌もいずれは避けては通れない米麹づくりの機械化なのかもしれません。まだもう少しの間、一から手作り米麹にこだわっていこうと思います。

おすすめ、手作り米麹はこちら

Kokonoemiso Blog 著者

有限会社 九重味噌の5代目を務めております。

九重味噌の主人は歴代全員が醸造の勉強をしたことがありません。日々の味噌造りを通じて試行錯誤し、時に協力いただける取引先に教えを請い、五感を使って感じ取った実際の感覚を頼りに、その裏付けと改善を繰り返し、より良い米麹、より美味しい白味噌をめざして頑張っております。

2006年8月入社
取締役、味噌製造、地方営業発送、ホームページ運営を担当

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