関東の人が失敗してしまう、関西の白味噌を使ったお雑煮
今年も年末がやってきます。
九重味噌はお正月のお雑煮に向けた白味噌の仕込で11月~12月末まで、休み無しです(T_T)
京都に近い滋賀県の特に南部では白味噌のお雑煮が主流で、京都はもちろん大阪、兵庫、香川など広い範囲で食べられます。しかし、滋賀県大津市から対岸の野洲あたりからはお雑煮はすまし汁が多くなります。
関東のお雑煮は「すまし」が主流!?
私の稼業は味噌屋でしかも白味噌なので、お雑煮は白味噌しか無いと持っていましたが、少し調べてみると関東のお雑煮はすましが多いことを知りました。
昆布・鰹で出汁を取り、更に具の鶏肉からも出汁が出るすまし汁が基本の様です。具は地域によっていろいろあるようですが、具沢山なお雑煮になるイメージがします。
関西の白味噌のお雑煮とはまったく別物ですね。これはこれで出汁が効いて美味しそうです。
主人が関西人なのですが、白味噌のお雑煮が上手く作れません。
関東のお雑煮からすれば、関西の白味噌の雑煮は想像もつかないのは無理もありません。しかも普通の味噌汁を作る感覚で白味噌を使うと必ず失敗します。
関東の人が白味噌のお雑煮で失敗しないポイントは以下。
関西の白味噌雑煮を失敗しないポイント
お出汁は「昆布」のみ
出汁が美味しい関東のお雑煮からすれば、
「はぁ?昆布だけ!?」という感じでしょうが、これが基本です。
白味噌の味と香りは繊細で弱いです。なので、出汁や具材の香り、味の影響を受けやすいのが関西のお雑煮です。
出汁は鰹ダシは使わず昆布ダシでするのがベストです。プロの料理人の中には鰹の2番ダシを使うという人も見たことがありますが、それでも鰹ダシの香りが勝ると思うので、やはり昆布ダシです。
味の素さん「本だし」はダメ
AJINOMOTOさんの「本だし」などの顆粒の出汁の素は、塩分が入っているので使えません。
九重味噌ではお正月に向けて仕込んだ白味噌の試食をお雑煮で何回もするのですが、顆粒ダシは塩分が入っているので昆布からとった出汁に比べて辛くなります。白味噌のお雑煮の味をかなり変えてしまうので使えません。
食べ比べてみると驚きの差が出ました。
白味噌を入れる感覚に注意です。
関東の人が関西のお雑煮で失敗する場合、白味噌のを入れる量のイメージがまったく無いのが原因と感じました。
普段のお味噌汁で使うお味噌の量というと、例えば4人前で多くても80g~60g程度ですが、関西のお雑煮は白味噌を約200g使います。
これだけ味噌を入れる量が違うと感覚が全く違うので失敗するのです。倍以上、違うのですから。
結果、完成するお雑煮は薄~い味の白味噌の味噌汁を作ってしまったということになります。
九重味噌の「極上白味噌」は特に塩分が低いので、大量に入れます。お雑煮はトロミが付くぐらい濃くなりますので、この量感覚を経験することが大切です。
量が多いので白味噌を溶く際には数回に分けて鍋の底に塊が沈殿しないように注意です。
さらに関西のお雑煮を極めるには
白味噌のお雑煮は香りが弱いので昆布ダシを使うことは前述しましたが、具材にも注意を払うと更に美味しく作ることができます。
関西のお雑煮の具材は、京野菜の祝大根、金時人参と丸餅です。
野菜も煮ると味、ダシが染み出てきます。その野菜を煮たときの青臭さも取り除いてしまおう、と言うことです。
大根と人参は野菜の中でも香り味が強いので効果が有ります。
少し贅沢ですが大根とにんじんは別に昆布出汁で下茹でしてから、お雑煮に入れます。水で茹でてもいいですが昆布出汁で下茹でした方が美味しくなります。
丸餅は焼いた場合その焦げ部分も香りが強いので、できるだけ取り除きましょう。
あと、自宅で餅つきをするご家庭の場合、餅に片栗粉を付けて丸めますので片栗粉も良く取り除いておきましょう。
関西のお雑煮の作り方・レシピ
ポイントを踏まえた関西の白味噌お雑煮の作り方レシピを順を追って見ていきましょう。
ここでご紹介するレシピは九重家のお雑煮です。もちろん白味噌の製造元の家なので、重視しているのは白味噌を生かす工夫です。
ご家庭それぞれに伝統のレシピがあると思います。「こうでなくてはならない」とカチカチに考える必要はありませんので、ご参考までに白味噌の味に重点を置いた作り方として参考にして頂ければ幸いです。
必要なものは以下です。
白味噌は九重味噌の極上白味噌で200gですが他メーカーでももちろん大丈夫です。京野菜でなくても普通の大根、にんじんでも可。お好みで糸鰹を少々準備しておきましょう。
手順1、出汁をとる
昆布は浸ける前に水にぬらして固く絞ったキッチンペーパーで汚れをふき取ります。
昆布を水500ccとやや余分の量に浸けておきます。できれば料理の前日に、無理なら2~3時間前でも大丈夫です。
手順2、火にかけて昆布を取り出す
そのまま火にかけて、沸騰する直前で昆布を引き上げます。
手順3、取った出汁を分けて具を下茹で
やや余分に準備した出汁を少し別の鍋に分けて大根、人参を下茹でします。面倒なら出汁でなく水で下茹でしてもOK。
下ごしらえは先に済ませておいてください。
手順4、出汁に白味噌を溶く
作った出汁500ccに白味噌をたっぷり約200g溶きいれます。塊が鍋の底に残らないように少しずつ溶きましょう。
味の濃さはこの段階で決めてしまいます。
手順5、餅を焼く
手順は5番目ですが同時進行してください。焼く前に片栗が付いている餅はよく取り除きます。焼きあがったら焦げた部分をできるだけ取り除きます。一度、湯に通して取り除いてもOKです。
手順6、盛り付け
先ほど下茹でした具を引き上げ余分な水分を切り、手順4の味噌汁に餅とともに入れます。
最後にお好みで糸鰹を中心にボリュームがでる形で添えれば完成です。無しでも可。
関西のお雑煮は白味噌が命
いかがでしたか?
普通に作るお雑煮よりも工夫するところがあり手順は味噌汁よりもやや複雑です。
大切なのは繊細で弱い白味噌の味を殺さないバランスです。
白味噌のお雑煮は塩分が低いので傷みが早いです。普通の味噌汁のように2日目に食べるのは避けた方がいいでしょう。
これから初めて白味噌お雑煮を作る関東の人や、まだまだ納得できるお雑煮にたどり着いていない人にも参考になれば幸いです。
最後に九重味噌の「極上白味噌」もよろしくお願いいたします。