美味しい白味噌作りのポイント。九重味噌がめざす白味噌とは。
白味噌(西京味噌)はメーカーの個性が色濃く出るお味噌の一つです。
色が黄色い白い、硬い柔らかい、甘い甘くない、香りが強い弱い、などなど特徴がありますが、今回は九重味噌がめざす美味しい白味噌作りのポイントをご紹介します。
九重味噌がめざす基本の白味噌
お客さんに受入れられる、美味しい味というのが基本の方向性ですが、具体的にめざす味は以下を心がけています。
この3点を目指しています。どの項目にも共通することですが、素材由来の味であるということです。
水飴は人口の甘味をプラスすることになり自然とは言えません。加える量によっては甘さがしつこくなり自然さを損ないます。
酒精の添加も味を故意に変えてしまいます。酒精は度数95度などのアルコールで苦味辛味があります。繊細な白味噌に入れることで雑味になってしまうのです。熟成を止める働きがあるので白味噌本来の美味しさを引出す、その阻害になってしまいます。
結果、めざす3点の要素を満たそうとするならば、「米、大豆、塩」だけを使った余分なものは入れない白味噌(西京味噌)。
それが九重味噌がめざす極上白味噌なのです。
白味噌(西京味噌)の基本の作り方
まずは白味噌の基本の作り方を大まかにご紹介します。
上記の図が製造工程の流れです。米、大豆、塩の加工で3つのラインに分かれています。味噌を仕込む段階で1本に集約され熟成後に完成です。詳細についてはこだわり製法で詳細を公開してます。
美味しい白味噌の最大の秘訣「手作り米麹」
米麹が美味しい白味噌(西京味噌)の最重要ポイントです。
上の製造表で見ると「米洗い」から「米麹完成」までのピンクから紫色の部分が米麹づくりの工程です。
製造工程で最も時間がかかるのが米麹作りです。九重味噌では「手作り」で米麹を作ります。最も手間のかかる製法ですが、最も良い米麹が作れる欠かせない製法です。
- 「米洗い」
- 「浸漬」米に水を吸わせる
- 「米蒸し」米を蒸す
- 「冷却種付」蒸米を適温にさまし、「もやし」を付ける
- 「引込み」麹室の床に入れる
- 「床もみ」床の米を撹拌する
- 「麹盛り」米を麹蓋(こうじぶた)に分け入れていく
- 「手入れ」各麹蓋(こうじぶた)の米を撹拌する
- 「完成」温度管理を続けて完成させる
米麹作りだけで4日間かかります。
米を洗い、水を吸わせてから蒸します。蒸米を適温まで冷まし「もやし」と呼ばれる麹菌をふりかけていきます。その後、すぐに「麹室」(こうじむろ)と呼ばれる米麹作り専用の部屋へと運ばれ「床(とこ)」という浴槽に入れます。この時点で米麹作りがスタート。
麹室(こうじむろ)では米麹の成長に合わせて部屋の温度・湿度を調整します。米麹は品温35~37℃が最も成長しますが、成長するにつれて米麹自身が発熱して品温が上がってきます。
床に入れた段階では品温37℃以下にしてやり、「床もみ」で撹拌し新しい空気を取り込ませ均一にします。翌朝の「麹盛り」では品温40℃まで上がります。これを麹蓋(こうじぶた)に小分けにし品温を再び35℃まで落としてやります。時間がたつにつれ更に成長し品温47℃まで上昇すると「手入れ」をして再び品温35℃まで落としてやります。手入れ作業の後は室温・湿度を細かく調整して最適な品温35~37℃に調整するのですが、米麹の成長による熱は最終的には品温42℃前後まで上がり4日目で完成します。
基本は「米麹が成長すると自然と発熱する、人が手入れをして適温にする」
米麹の成長が作業の基準になっています。つまり米麹の成長が遅ければ作業時間は後にずれこみますし、早ければ早く作業を開始します。それが手作り米麹です。
対して機械で作る米麹は、機械が温風を米に供給して機械が米麹の品温を強制的に調整します。米麹が成長しているかどうかの問題ではなく米麹が成長するプロセスを機械が強制的に作りだし進行する点が「手作り米麹」の手法との最大の違いになります。米麹が成長が遅くても機械は我が道を進んでいくので米麹の仕上りは必ず良い状態とは言えない場合があるのです。
しっかりと成長した米麹が、白味噌をしっかりと糖化・熟成させて自然な甘さと風味を作りだしてくれる。美味しい白味噌には必要不可欠。
ちなみに「手作り」では作業人数1~3人、1つの作業工程で1~1.5時間半かかり間の時間は温度管理をします。製造量は多くても250kg前後の米。
「機械作り」は作業人数1人、米を投入すれば後は機械が勝手に作ります。大小ありますが600kg以上できます。手作りが廃れていく理由がここにあります。
美味しい白味噌のポイント「大豆の処理」
美味しい白味噌(西京味噌)の秘訣、二つ目は「大豆の処理」です。
白味噌は大豆の皮を全て脱皮します。
普通の味噌と異なる製法です。専用の機械を使って大豆の薄皮を時間をかけて取り除いていきます。人仕込分の大豆を処理するのに1時間ほどかかります。
白味噌にとって大豆の皮は仕上りが悪くなる原因です。
大豆の皮が残っていると熟成段階で皮が赤黒く変色して味噌がマダラ模様になってしまいます。仕込んだ白味噌を漉した後もその色は均一化されて白味噌全体の色を悪くさせる一因になるのです。
白味噌では大豆を蒸すのではなく「煮る」
脱皮した大豆を煮ることで大豆の色素を取り除きます。煮汁を何度も交換し、新しい水を入れて再び煮ることを繰り返すことで大豆の色や臭みを取り除きます。古くは「ぼかし炊き」という方法で何度も煮汁を入れ替え、その過程で大豆の皮を取り除くのですが、現在は大豆の脱皮が可能なので、煮汁の交換回数は少なくて済みます。
写真は大豆煮で吹きあがってきた灰汁を釜フタを開けて故意に吹き流す様子です。灰汁を取り除くことで白味噌が美味しくなります。
キレイな白味噌にする為に
大豆は脱皮し、更に煮る段階で水替えを数回して色素や臭み、灰汁を取り除く。
アツアツの白味噌
これで「手作り米麹」と「煮大豆」と材料がそろいました。仕込は上記と塩を混ぜるだけです。重要なのはその後の熟成にあります。
普通の味噌は大豆を冷ましてからでないと混ぜることはできません。それは米麹の酵素・酵母を熱から守る為です。
甘酒は米麹・米・水を混ぜて55℃で8時間以上保温することで糖化して甘くなります。白味噌も同様で目指す熟成時の温度は55℃なのです。白味噌を美味しく作れれば、甘酒も同じ米麹で美味しく作ることができます。
ただ、仕込後に仕込んだ白味噌を高温に保つのは難しいですし、この段階で前述の大豆皮の処理の影響が出てきます。大量の白味噌を固形の状態で温度を上げるのは至難の技です。各社工夫を凝らしているでしょう。
この辺りは企業秘密です。
キレイに細かく白味噌を漉す
熟成完了した白味噌を、次は漉す「すりつぶす」行程です。
普通の味噌はミンチ機を通しているだけの場合が多いのでキメが粗いです。対して白味噌(西京味噌)は臼ですり潰すので非常にキメ細かく仕上げます。
普段使いの味噌、中味噌などを主体としている味噌製造メーカーは「すり潰す」ノウハウがない場合もあるので白味噌(西京味噌)はやはり専門にする醸造元が品質がいいです。
しかも、ミンチを通すだけなら一瞬ですが、すり潰すとなると600kg前後の白味噌でも約2時半ほどかける手間な作業です。企業秘密なので写真は一部のみ。
美味しい白味噌ポイント
参考になりましたでしょうか?
白味噌を作っているメーカーにとってはあたりまえなポイントばかりですが、それを忠実に市場に送り出すには難しい部分もあります。
「手作りの米麹」「無添加」「大豆煮」この辺りは理想に添えない箇所です。
生産効率を優先し大豆は圧力釜を使ったり、米麹は自動製麹機を使ったりします。それが悪い訳ではなく、安さも重要です。
無添加はスーパーに陳列すると品質が維持できないので保存温度と陳列期間が保障される売り場に限られてきます。
基本とは言えあまりお伝えしたくない企業秘密ですが、白味噌(西京味噌)がどのように作られているか、工夫や違いについて少しでも知識をもって親しみを感じて頂けると幸いです。
ちなみに、これらを実行したとしても弊社と同じ白味噌が作れるということはありません。使う機材、素材、それを使う人、様々な要素が組み合わさって完成するものなので各メーカーさんの個性が出ています。
理想の形に少しでも近づけるよう努力する九重味噌 「極上白味噌」 もよろしくお願いいたします。