「白味噌をはじめて買おうか」という初心者の方向けにお送りします。
白味噌について基本から、少し詳しいことまで正しく知ることで購入検討の際に役立つ基本的な情報としてお役に立てればと、白味噌の醸造元の視点から記事にしてみました。
おすすめ・ランキング記事は白味噌の間違った情報も…
白味噌を初めて購入するとき、皆様はどんな情報を参考にされるのでしょうか。
はじめからネットで購入を考えている人なら、真っ先にAmazon、楽天といったショッピングサイトに行かれて検索されると思います。
わずかですが、信州系の白味噌と関西系の白味噌が混同されて掲載されいますので、初めて購入を検討される人には不親切です。
ネットで情報を集めて購入は地元のスーパーで買いたい場合はGoogle検索する人もおられます。
検索結果にはお役立ち記事やランキング記事が最初にヒットしてきますが、これが曲者で白味噌の間違った情報が掲載されています。
残念なことに検索結果上位に出てくる記事内容が酷かったです。ランキングもでたらめです。
白味噌の醸造元として正しい情報を発信しなければ、と思いました。
白味噌とは
ここで取り上げる白味噌とは、その定義についてしっかり理解しておかないといけません。お味噌の色だけで分類すると信州味噌の白系も入ってしまうので、しっかり分けておく必要があります。
白味噌(甘味噌)ではないもの見分け方
対して、白味噌と呼ばれているが、関西白味噌とは違う味噌とはどんなものがあるか。代表されるのは信州味噌の色の白いものを「白味噌」と呼ぶことがあります。
信州味噌は甘味噌ではありません。もし購入されるとき区別するポイントは表を参考に。
ポイント | 白味噌(甘味噌) | 甘味噌ではない物 |
---|---|---|
塩分 | 約5%前後 | 約10%前後 |
原材料 | 米が必ず1位 | 1位に大豆が来る |
特に塩分は必ずといって良いです。
原材料は配合割合が最も多いものが表示順で1位にくるルールがあります。
信州味噌でも麹歩合が高い商品もあると思いますので、必ず1位大豆とは限りません。
この2点を抑えておけば間違って購入することはないでしょう。
主な地域はどこ?
主な地域は、広島県から香川県、京都府までが主な産地ですが、近隣の県でも生産があります。
特に広島県は府中味噌、香川県は讃岐味噌、京都府は西京味噌と呼ばれています。
関西人は特にそれぞれを、あえて分けて呼ぶことはなく、関西では白味噌とひっくるめて一括の呼び方で通るのではないでしょうか。
白味噌の雑煮文化と、生産地の関係
弊社のある滋賀県は京都府に近いこともあり、大津市内(主に南部)では白味噌のお雑煮でお正月を迎える文化が古くからありますので、文化的な生産の最東端かもしれません。
ただし、広島は府中味噌という白味噌の有名産地でありながら、お正月のお雑煮はすまし汁という地域もあります。
実際は味噌作りは商売ですから、長野県信州味噌のマルコメなど地域文化に関係なく、関西甘味噌を作っていたりします。
となると、主な生産地域のメーカー=白味噌とも限らず、他の地域でも白味噌が作られていますので地域でザックリ判断することはできない一面もあります。
白味噌の特長
カスタードクリームのような白い色
言葉通りの真っ白ではありません。明るい黄色と白を混ぜたようなカスタードクリームのような感じの色です。
他のお味噌と比較してその色は群を抜いて白く、白味噌の製造方法にはその色を出すための工夫がされています。
影響が大きい独自の工程は、大豆の処理、熟成方法です。後述します。
ずば抜けた甘さ
圧倒的な甘みがあります。米麹がもつ糖化酵素による甘さなので砂糖のような甘さとは違います。米麹の香りがするもの特長です。
普段使いの味噌のイメージとは全く違うので、普通の味噌汁を作る感覚の量感で使うと失敗します。
甘さに関係が深いのは麹歩合と、工程では熟成の工程です。
原材料から見る特長
白味噌は米味噌に分類されます。
全国で作られるお味噌の80%は米味噌と言われています。
米を麹にして、大豆、塩で構成されます。基本はこの3種の配合と製法の違いだけで多様なお味噌を作ることができます。
「米・大豆・塩」この3点だけがお味噌の構成で、白味噌においては、水飴、砂糖などは本来は不要の原料です。酒精などの添加物も同様。
高い麹歩合
白味噌は麹歩合20以上など、麹歩合が高いことが特長です。米麹の比率の高さが独特の香り、甘さを作ります。
麹歩合とは米麹と大豆の比率です。この比率がお味噌の性格を決める重要ポイント。
例えば、米麹20に対して大豆10の比率で仕込んだお味噌は、麹歩合20(2倍麹、倍麹とも言われます)といいます。
麹歩合10なら、米麹10:大豆10となります。等倍麹とも言われます。
低塩分5%前後
一般のお味噌は塩分10%前後に対して、白味噌は約5%でかなり低いです。単純に塩分が高いと辛くなってしまうという理由もありますが、熟成期間と関係が深いです。製法の部分で後述。
米麹由来の繊細な甘さを邪魔せずに引き立てることが重要です。
白味噌独特の製造方法
次は製造工程から違いを見ていきます。基本は普通のお味噌と同じですが、白味噌独自と言える工程があります。
この4つの工程は全く違うので紹介したいと思います。これがなければ白味噌ではない、と言えるほど重要かつ普通の味噌との違いです。
大豆を脱皮
大豆の薄皮を全て取り除きます。現実的には皮をゼロにすることは難しいですが、機械を使ってできるだけ脱皮します。
通常の味噌は大豆をそのまま使います。白味噌では以下の2つ理由から皮は都合が悪いのです。
■きめ細かっく仕上げる
皮が付いているとすりつぶしたときに荒さが残ってしまいます。キメ細かくクリームシチューの様に仕上げるには脱皮が不可欠。
■白く仕上げるため
白味噌は熟成で高温をかけるので大豆の薄皮が赤黒く変色してしまいます。それが大量にあるとキレイな白色に仕上がらないためです。
大豆は煮る
通常の味噌は大豆を蒸します。今は圧力釜を使って短時間で蒸している蔵が多いです。
白味噌は大豆を白く仕上げるために「かぼし炊き」とう手法をします。
煮汁が沸騰してきたら故意に釜を噴かして大豆の薄皮や灰汁を噴き出し、一旦煮汁を全て捨てます。そして、新しい水に交換して再び噴かすを繰り返し、大豆を白く炊き上げます。
現在は機械が進歩して大豆脱皮ができるので「かぼし炊き」を徹底する蔵は無いと思います。弊社も噴かす回数は1回で水替えは3回行っています。
製麹の温度帯
白味噌の米麹は独特です。
普通の味噌では大豆のタンパク質を分解する蛋白分解酵素のプロテアーゼ系を多く作るように、製麹中は35~38℃が適温と言われています。
白味噌は加えて甘くするために糖化力を高めます。アミラーゼ系の分解酵素が多くなるよう、製麹中は最高45℃程度まで品温を上げます。
甘酒の米麹もよく似た作り方をしますが、甘酒の場合は糖化力さえあればいいですが、白味噌は大豆と合わせて発酵するので、同時に蛋白分解酵素も要求されます。
それぞれの酵素が高められる温度帯が異なるので、両方を高めて米麹を作るのはとても難しい工程です。
糖化させる熟成
甘酒の作り方にとても似ています。
糖化に最適な熟成温度は甘酒の保温と同様に55℃が適温となっています。
しかし、味噌は固形物なので55℃まで品温を高めるのは至難の業。
つまり熟成工程での加温(人工的に温度を加える)は必須になるので、天然醸造の白味噌はありえません。
高温になるので大豆の皮が残っていれば赤黒く変色しします。塩分が低いので熟成期間は3日程度で完了するので、白味噌は早熟のお味噌と言われます。
一方、普通の味噌の場合は塩分が高いので熟成には時間がかかります。天然醸造なら気候にもよりますが1年前後、速醸法では品温35℃前後で約3ヵ月などです。白味噌の熟成がいかに短いかわかります。
代表的な白味噌の大手メーカー
関西の白味噌大手メーカーのリンクを張ってみました。
これ以外にも周辺の地域には多くの白味噌醸造元があります。
大手メーカーは美味しく大量安定的が特徴かと思いますが、小さな醸造元ではもっとこだわりがあって尖がった白味噌もあります。意外と地元のだけに展開しているスーパーや生協には地場の蔵元の珍しい白味噌があるかもしれません。
さらに実用的な白味噌の選び方
実際に商品を手に取って選ぶときに注目すべきポイントに特化した記事もおすすめです。ご購入のさいの参考に、
以上、白味噌の知識を深めるお役に立てたなら幸いです。